本来の自分であるかを判断する方法。

人が自己実現に向かうのは自然で普通。
ノッティンガム大学のステファン・ジョセフ教授(心理学)によると、「本当(本来)の自分であること」(authenticity)の必要性は万国共通で、非常に強いものだそうです。また、米国の心理学者アブラハム・マズローによると、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きもの」だそうです。人は自分に適していることをしていない限り、すぐに新しい不満が生じて落ち着かなくなってくる。すなわち、「自己実現」の欲求とは、自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求だそうです。

 

ステファン・ジョセフ教授によると、人は本当の自分であるとき、自己実現しているそうです。「基本的必要が満たされると、人は自己実現に向かう。それが人間にとって自然で、普通の状態」だといいます。

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自己実現、自分さがしに意味はあるのか。

「自己実現」あるいは「本当(本来)の自分であること」というと大きなことのように感じてしまいますが、一昔前にときどき言われた「自分さがし」と同義ではないでしょうか。「自分さがし」なんて無意味。そんな意見もあると思います。

 

高名な心理学者に言われるとそんなものかと思ってしまいますが、「自己実現に向かうのは自然で普通」は、本当に正しいのでしょうか。また、その逆の「自己実現なんて無意味」も正しいかどうかは分かりません。いずれの意見に立つとしても、「信仰」のレベルではないかと思うのですが、どうでしょうか。にもかかわらず、この記事をご紹介するのは、内容が案外おもしろいんです。「なるほど、そうかもなあ」と思います。なので、とりあえず「自己実現に向かうのが自然で普通」という説に立ってみますね。

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マズローの自己実現理論

マズローの理論によると、人間に必要なもの(人間の欲求)は、いくつかのレベルに区別できるそうです。
・生理的欲求(たとえば、食べ物や睡眠)
・安全の欲求(雇用や健康)・社会的欲求(友情、家族)
・承認(尊重)の欲求(自信、他者からの尊敬)
・自己実現の欲求(道徳性や創造性があること、偏見・先入観がないこと)
これらの欲求は多くの場合、自己実現の欲求を頂点とするピラミッドの形で示されます(生理的欲求が一番下です)。しかし実際には、これらの欲求は、必ずしも厳密に階層構造になっているわけではないそうです。より基本となる欲求(必要性)が満たされなくても、より高次の欲求が実現されるということもあるそうです。
意地の悪い人は「自己実現」できていない人!?

 

本当(本来)の自分であるためには、自己実現を達成していることが必要だそうです。そして、自己実現を達成しているといえるためには、上記したように、道徳性があることや偏見・先入観がないことが必要でした(「自己実現の欲求」のところを見てください)。ですから、マズローの理論によれば、意地の悪い人は「本当の自分」ではないということになりそうです。つまり、意地の悪い人は、道徳性がないと思われますから、自己実現の条件を満たしていないというのです。

 

ステファン・ジョセフ教授によると、人を苦しめるような冗談を毎日いうような人は、たとえ自分のことを生まれつき意地が悪いのだと思っていたとしても、本当(本来)の自分ではない、つまり「自己実現」できていないのだそうです。

他者に対して攻撃的な人は、実は自分自身と敵対している!?

マズローの理論によれば、本当(本来)の自分を実現できている人というのは、新しい経験に対して受容的で、他者に対して共感的であり、批判的でなく、敵意がないのだそうです。これに対して、あからさまに攻撃的で敵意を示すような場合には、その人は自分自身と折り合いがついていない(自分自身と敵対している)ことをほのめかしているのだといいます。

マズローの基準と自分を比較していることが大切

ステファン・ジョセフ教授によると、「自分が本当(本来)の自分であるか(自己実現できているか)、そうでないか。それを判断するのは非常に難しい」といいます。その判断には内省や、自己批判が必要です。そして、自分の行動が本当の自分から出ているのかどうか確信が持てないときは、マズローの「自己実現ができている人」の基準と自分とを比較してみて、その性格を自分が満たしているか確認してみることが大切だそうです。

 

ただし、同教授によると、「本当(本来)の自分を実現できていない人は、一般的に、このような確認をすることに興味がない」のだそうです。しかし、何とか努力して、時間をかけて考えれば、そこから得られるものは大きい。そのような趣旨のようです。

感想

「他者に対して攻撃的な人は、自分自身に満足していない」。おおっと思いました(笑)。

 

人間は認知バイアスに陥りやすいそうです。とくに自分に対する否定的評価は不快ですから、ポジティブな自己像に対する欲求が自己中心性バイアスを生むといいます。自分をよく思いたいばかりに、自分には甘い評価をする。なので、自分を正確に評価するのには相当な困難が伴いそうです。ですから、「自己実現ができている人の条件と自分とを比較してみる」という内容を読んで、なるほどなあと思いました。

 

もっとも、他者に対して否定的態度や言動をとる人が、すべて自己実現できていないということでもないと思います。批判に「その人のため」という気持ちが強くある場合には、否定的言動(たとえば訓戒など)もよいことではないでしょうか。とにかく、他者に対する否定的言動が正当化される場合というのは、相当に少ないのかもしれませんね。気をつけたいと思いました。

 

でも、他者から否定的な言動や態度をあからさまにとられると、相当なストレスになります。回避行動もときには絶対に必要だと思います。