心を穏やかにする方法
だれでも怒ったり、心配したり、人をうらやんだり、心が動揺することがあります。そんなときに、言わなくてもいいことを言ったり、しなくてもいいことをして、後悔することもあるでしょう。心が動揺したときに平静を取り戻す方法を学べばいいのですが、私たちはあまりそういうことをしません。でも皮肉なことに、その方法はすぐ近くにあるのだそうです。
その方法というのは、呼吸です。「落ち着きたいときには深呼吸しましょう」。だれでも聞いたことがある表現ですが、真剣に受け止める価値のないことだと思ってしまいます。しかし、呼吸の効果は、科学的に実証されつつあります。呼吸は、心を落ち着かせる最善の方法かもしれないそうです。
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呼吸は、心を落ち着かせる強力なツール。
しかし、呼吸は無意識に行われるので、呼吸に注意を向けることもなく、心を穏やかにする効果を十分に利用することもありません。
呼吸によって感情が変わるのは、一つには、情動と呼吸が密接に関連しているからだそうです。Pierre Philipot(心理学者)の研究によると、感情状態が変われば呼吸のパターンも変わるというように、感情状態と呼吸のパターンには関連性があるといいます。たとえば、不安や怖れを感じると、呼吸は浅くなって早くなります。一方、幸せを感じると、呼吸は深くなって、ゆっくりになります。
また、その後の研究で、その逆もあることが分かったといいます。呼吸のパターンを変えると、その呼吸パターンに対応した情動を感じることが分かったのです。つまり、呼吸を変えれば、気分が変わるというのです。
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呼吸を変えれば、気持ちが変わる。
この発見は画期的です。怒り、悲しみ、喜びといった感情を、呼吸を使って変えられるのですから。強い怒りや不安を感じているときに、言葉でなだめようとしても、なかなかうまくいきません。思考だけで情動を変えるのは困難です。だから画期的なのだそうです。
呼吸の使用法を学べば、とても強力なツールになります。イラクやアフガニスタンから戻ってきた軍人には、重度の心的外傷を負った人がいますが、そのような人にも効果があったそうです。
呼吸法のその他の利点
いくつかの研究で、ヨガの呼吸法を行うと、心理的ウェルビーイングだけでなく、生理的なウェルビーイングを表す指標である血圧や心拍数についても即座にプラスの効果があったそうです。何分かの間に、気分がよくなり、自分の身体をはるかに健康な状態にすることができるとか。
片鼻呼吸法
鼻はいつも片方だけで呼吸しているそうです。常に両方の鼻孔で呼吸しているように感じますが、実は片方ずつ交代で呼吸しているとか。予後的研究によると、右の鼻孔での呼吸によって脳の左側に酸素が供給され、左の鼻孔での呼吸によって脳の右側に酸素が供給されるそうです。鼻孔が交代して呼吸することによって、心を穏やかにしてバランスをとる効果か生まれるのかもしれないと考えられているそうです。
そこで、ヨガの片鼻呼吸法を実践してみましょう。
1 右手の手のひらを広げ、親指を右の鼻に添え、薬指と小指を左の鼻に添えます。
2 左手は、膝の上におき、手のひらを上に向けます。
3 深く息を吸い、右手の親指で右の鼻を塞ぎ、左の鼻で息を吐ききります。
3 深く息を吸い、右手の親指で右の鼻を塞ぎ、左の鼻で息を吐ききります。
4 そのまま、左の鼻で息を深く吸います。
5 左の鼻で深く息を吸い込んだら、薬指と小指で左の鼻を塞ぎ、右の鼻で息を吐ききります。
6 そのまま、右の鼻で深く息を吸いこんだら、親指で右の鼻を塞ぎ、左の鼻で息を吐き、そのまま左の鼻で深く息を吸い込みます。
7 5と6を繰り返します。要は片方の鼻孔で息を深く吸い込んだら、その鼻孔を押さえて、今度は反対の鼻孔で呼吸をすればいいだけです。吸い込んだら、押さえて交代。これだけです。
目を閉じて5分ほどやってみてください。心と身体に表れる効果を感じてください。
感想
片鼻呼吸法、実践してみたいと思いました。ただ、5分だけとはいえ、特別に時間を取らないといけないです。そこで、アンドルー・ワイル(医学博士)の「ヘルシーエイジング」から、どこでもできる呼吸法をご紹介しておきます。
1 舌の先を前歯の裏側に軽くふれるように休めて、そのままの位置で以下の呼吸を行う。
2 「フゥー」という音をたてながら、息をぜんぶ吐き切る。(外でするときは、音をたてず、息をすべて吐き切ることに意識を向ければいいのではないでしょうか)
3 (口は閉じたまま)1から4まで数えながら、鼻から静かに深く息を吸う。
4 息をとめて、1から7まで数える。
5 1から8まで数えながら、ゆっくりと息を吐く。
6 これを4回くり返す。
1,2,3、4と数えながら、口を閉じて吸う。息をとめて7数える。1,2、3・・と8まで数えながら、口を閉じて吐く。これだけです。4(吸う)-7(止める)-8(吐く)ですね。
「この呼吸法は、どんな姿勢でも行うことができる。すわるときは背筋をまっすぐにのばすこと。少なくとも1日に2回はこれを行い、あとはストレスや不安を感じたり、こころが乱れたとき、すぐに行う」。
「自分の呼吸に意識がむいたときはつねに、ゆっくりと、深く、静かで、規則的な呼吸を試みること。吐くときは、肺から空気をしぼりだすような気持で、深く、最後まで吐ききること。そして、意識を呼吸にむける時間をできるだけ長くしていくこと。呼吸法の利点は、何の道具も費用もいらず、いつでも、どこでもできることにある。呼吸法は、私が知るかぎり、もっとも費用と時間対効果のすぐれたリラクセーション法であり、私の診察をうけにくる患者や、わたしが訓練している医療関係者には必ず呼吸法を教えることにしている」。